津波の特性と基礎知識。災害史に学ぶ津波対策

東日本大震災における津波の驚異

2011年3月11日。
まだ記憶に新しい東日本大震災が発生した日です。

死者15,894人。行方不明者2,561人。負傷者6,152人。
国内観測史上最大の津波を引き起こしたこの震災では、人的被害だけでなく、原子力発電所などへの被害も含め、日本経済に多大なるダメージを与えました。

三陸地方では過去にも多くの津波被害が繰り返され、その教訓から得られた数値に基づいて防波堤・防潮堤の対策されていたにも関わらず、東日本大震災で発生した津波は、その高さを軒並み上回り決壊。
東北地方から千葉県外房までの太平洋沿岸部を中心に甚大な被害が発生し、結果として、津波への備えが必ずしも十分ではなかったことが証明されてしまいました。

想定を上回る自然災害を完全に防ぐということは不可能かもしれません。
しかし、津波の特性を知り、少しでも生存確率を上げる事前対策は個人でも出来ることです。
津波から自分や、家族の命・財産を守る為、日頃から出来る事前対策を行っておきましょう。

津波の基礎知識

遡上高(そじょうこう)って何?津波の高さとの違いは?

津波の規模を示す際、「津波の高さ○m」や「遡上高○m」と表記されます。
例として、東日本大震災では最大の津波の高さは16.7m、最大遡上高は40.5mでした。
津波の高さと遡上高の違いは何でしょうか。
下のイラストを見てください。

津波の高さの遡上高

「遡上高」も「津波の高さ」も、津波のない状態「平常潮位」を基準にしています。

「津波の高さ」は、海岸に到達した際の高さで、検潮所などの観測施設で観測されます。
気象庁が津波予報で予想するのは、この「津波の高さ」の方です。

一方、「遡上高」は最終到達地点を指します。
大津波は、海岸を進み、街を飲み込みながら陸上を這い上がり襲ってきます。
この津波が、最終的に這い上がった最高地点の高さのことを遡上高と呼びます。
一般的に「遡上高」は、「津波の高さ」の約2倍〜4倍程度高くなる傾向にあります。

津波警報や、津波注意報が発表された際は、この遡上高も考慮し、高い場所へ避難することが最も大切となります。

津波の特性

引き潮がなくとも津波は襲来する

津波には2パターンの襲来ケースがあります。
「津波が来る前に必ず引き潮がやってくる」と伝えられている地域がありますが、これは100%正解ではありません。

津波が襲来する際、引き潮があってからやってくるケースはもちろん有りますが、引き潮がなく、いきなり襲いかかってくるケースもあるのです。

事実、先の東日本大震災では、大津波警報が発令された後でも海面に変化はなく、突然港のすぐ沖の海面が大きく盛り上がり、10m以上もの津波が襲来した地域がありました。
津波が来る前に引き潮が起こると思い込んでいた人は、避難所から一旦自宅に戻ってしまった人も少なくなかったようです。

このように引き潮がなくとも津波が来るケースは十分にあるので、「引き潮が起こってから逃げる」、「引き潮が来ないから自宅にいる」という行動は避けましょう。

防災行政無線が完全に正しいとは限らない

災害が起こった際、情報の収集は生死を分ける重要なものです。
災害時には気象庁などの情報を基に防災無線が放送されますが、その情報が想定を超え、結果誤った情報となることもあります。

東日本大震災の時、陸前高田市の住民は防災無線から放送された「津波の高さ3m」という内容を信じ、すぐに逃げなかった人が多くいました。
過去にも3m程度の津波は起こっており、その時の経験から油断していた人が多かったのです。

下の映像は、当時陸前高田市の消防団の方が撮影された津波第1波の映像です。
津波が想定を超え、緊迫した状況の中、撮影された消防団の方が必死に近隣住民を誘導しているのが分かります。

また、壊滅的な被害を出した宮城県南三陸町でも当初「津波の予想される高さは3mです」と放送されていました。
しかし、当時防災センターに勤務していた女性職員の故・遠藤未希さん(当時25歳)が、最後まで自らの命を懸け、何度も何度も「高台へ避難してください」と呼びかけ、多くの人命を救いました。
逃れた人たちは、「あの放送が無かったら、私たちは生きていなかった」と言います。

自然災害は想定を遥かに超え、襲来することがあります。
決して油断せず、避難をすることを心がけましょう。

自分や家族が普段いる場所の「海抜」を知っておく

自分が住んでいる地域や、普段よくいる場所の海抜を知っておきましょう。
海抜とは、海水面から測った陸地の高さのことです。
よく「津波の高さよりも海抜が高いから心配ない」という言われ方をしますが、津波は街を飲み込みながら高い場所へ上がってくる力がある為、海抜の方が高いから100%大丈夫というわけではありません。
しかし、基準の目安としては、津波の高さよりも海抜の方が高い方が安全であると認識しておきましょう。

下記は海面が上昇するとどうなるかを表示するサイトですが、自分が普段いる場所の海抜がどのくらいかを調べることが出来ます。

Flood Maps

初期表示では海抜7m以下の地域が色付けされていますが、左上のSea Level riseを変更すれば色付け出来る海抜を選択できます。

海抜40mともなると、主要都市の東京・大阪・名古屋・福岡などはほとんど色付けされてしまいます。
自分の普段いる地域は何m以上の津波が来ると沈んでしまうのか。目安として見ておきましょう。

海抜

避難経路と避難場所を確認しておく

地震や津波が発生した際、避難場所を考えている余裕はありません。
避難場所は事前に確認し、どこへ逃げるべきかを決めておきましょう。

津波から逃げる際の避難場所の目安

  • 前項で調べた、より高い海抜にある場所の高い建物
  • 耐震性が高く、老朽化していない建物

津波の速さは時速36km程と言われています。
一般成人男性が全力疾走しても大体の時速は約20〜25km。
津波はすぐ襲いかかってきます。
予め出来るだけすぐ行ける高い避難場所を把握しておきましょう。

また、大津波が来るときはその地震規模もかなり大きいことが予想されます。
事前に決めていた避難経路が使えない、ということも可能性としては考えられます。

まず避難場所を決めたら、複数の避難経路を決めておき、万一の時に備えましょう。

必ず覚えておく津波への事前対策と心構え

津波は簡単に人命を奪います。
しっかりと基礎知識を持ち、常日頃から事前対策を行っておきましょう。

津波まとめ

  • 引き潮がなく、突然大きな津波が襲来するケースがある。(見に行かない)
  • 津波は第一波が最も大きいとは限らない。(第一波の情報で油断しない)
  • 津波は繰り返し襲ってくる。(引いても戻らない)
  • 30cm程度の津波でも巻き込まれる恐れがある。
  • 初期情報が100%正しいとは限らない。(津波の可能性があればとにかくすぐ逃げる)
  • 津波からの避難は、遡上高を考慮し、とにかく高い場所へ避難する。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です